【プロフェッショナルに聞く】 日本初CRMストラテジストが語るカスタマードリブンの店舗運営とは<後編>

環境変化に対応する顧客志向力

>前編(前編記事をまだ読んでいない方はこちらからご覧いただけます)の最後でネットとの競争というキーワードが出てきましたが、渡會さんが2006年に電通リテールマーケティングを設立された頃と比べて、流通業界を取り巻く環境の変化としてもっとも大きいものはやはりAmazonのようなeリテイルの出現、EC化の流れでしょうか。 

>まさにそうですね。スーパーマーケットなりドラッグストアが一番意識すべき要因はAmazon。配送の問題で今重篤な状態にありますが、やはりAmazonのサービスは驚異的なスピードでリアルな店舗のマーケットを食い尽くして行っている。リアル店舗がそれに対抗する最後の競争力は接客だと思っている。そのパフォーマンスレベルを上げてロイヤリティを上げるか?それを意識していかないとリアルな店舗は儲からなくなっていく。 

>実際に店舗の現場にいる方々はAmazonを意識しているのでしょうか? 

>現場、店長さんがネット販売との競争を意識しているか?これは90%ノーですね。すぐお隣に同業競合店ができれば気にしますけれど。そういうお店を抱える本部自体にネット販売に対する危機感がどこまであるかどうか?ということが最大のポイントになりますね。 

>本部の方々は当然強く意識しているのですよね。 


>そうですね、本当に強く意識していると思います。例えばドラッグストアの平均来店年齢は49歳なんですが日本国民の平均年齢は46.4歳(2015年国勢調査人口等基本集計より)、3歳差がある。これはどういうことかというと、10代、20代がほとんど来ていないということになる。日本国民の老齢化のカーブより、ネットが主戦場となっている商材を扱っているドラックストアの顧客層は極めて早い老齢化のカーブを描いているということがわかる。これを打開するための基本的な考え方は二つ、一つには若い人が呼べる店を作る、もう一つは他の客層からの客単価を上げる。そういう選択を迫られている。高齢化が進むと遠出しない消費者が増える、そうするとどんどん商圏が狭くなる。となると店舗が近くにどんどんできてオーバーストアになる。お店の収益が減っていく、そこにAmazon、楽天のようなECの存在が大きくのしかかるわけですから瀕死の重症なんです。 

>なるほど、そんなドラッグストアの方々に申し訳ないのですが、私も化粧品はネットで購入することがほとんどです。


>(笑)。そういうファクトに対し、お店の経営はAmazonを意識してどう生き残るかを考えていかないと駄目なんです。ショールーミングという言葉がありますよね?あれを敢えてやる店づくりというものを提案しているんです。お客さんに来てもらわないと始まらないのでいかに買わなくてもいいから、商品を試せる、選べるお店にするということが客層を増やすきっかけになる、色んなことをやっていかなければならない。その背景にあるのは来てくれた人のロイヤリティを上げるためにはどうすればいいか、そのためには来てくれたお客様の様々なデータをどのように収集するかを考えなければならない。それはID-POSのような購買データだけでなく、買わない人のデータも重要になってくるのです。 

>買わない人のデータを収集する方法とは、具体的には?

>技術的には実用段階にあるものですが、お店に来店した人が商品を手に取りました、ある人はその商品を買いました。ある人はその商品を見て棚に返して帰ってしまいました。その人の顔の表情を画像解析します。そうするとこの商品のどこをどう読んで表情がどう変わったかを解析し、なぜ購入に至らなかったかを分析できます。買わなかった人の分析で顕在需要を取りこぼさないようにする。 

>面白いですね。Apple Storeで、バーコードを読み込めばアプリで決済してくれるモバイルセルフチェックアウトや、Amazonが実験的にチェックアウトレス店舗の運営をアメリカで始めたニュースを見ました。スマホにバーコードを表示させてゲートで読み込ませ、好きな商品をバッグに入れてあとは店を出る時に総額がAmazonアカウントで決済されるという…手に取ったが途中で棚に戻したという行動もちゃんと捕捉されているというのが凄いなと。膨大な購買行動測定データとして蓄積されたら有用でしょうね。 

>そうですね、これからは買った人の情報以外に、買わなかった人の情報をもとに、なぜ買わないのかという仮説を立てることができれば機会ロスを埋めることができる。顕在需要を取りこぼさず潜在需要を掘り起こすことができるのです。 

>なるほど。 

>それから、棚の中に商品が3個ある場合と、1個だけある場合と、1個もない場合だと売り上げが全く違ってくるのです。1個も商品がない状態を完全欠品と言いますが、1個だけある状態を心理的欠品といいます。なぜか?心理的にこの商品は残り物なのだなとお客様は思って手を伸ばさない状況に陥ってしまう可能性があるのです。お店の在庫管理というのも購買行動における心理的な要素を科学しながら行っていく必要性があるのです。それこそ防犯カメラで店舗全体の在庫状況を見て自動発注につなげるという仕組みも開発されているし。先程のAmazon Goもそうですが、リテイルではそういう先端的な取組が数限りなく行われていますから。 

>最先端のテクノロジーが駆使されている感じがしますね。

>それとね、もう一つ面白いものをお見せすると…これはウォルマートの店内です(動画リンクへ)。買い物客の後ろを何かついてきていますね。これはサンフランシスコのベンチャー企業Simbe Robotics のTallyというロボットで、Tallyが一日中店内の棚をスキャンし、画像認識することで在庫管理をしてくれるのです。 

>そうなんですね!在庫管理のオートメーション化ですね。 

>Tally がスキャンした棚の情報はリアルタイムで管理用タブレットへと転送されるので、管理者は商品の補充や発注をスムーズに行うことができる。これをウォルマートの主要店舗で実験導入しているんですよ。在庫管理はどんどん自動化し、このシステムを究極のシステムに仕上げようとしている。これからはこういう時代なんです。小売業で一番面倒でコストがかかる作業は実は棚卸しで、何ヶ月に1回の頻度で実施している、その専門サービス会社まである。しかしこのテクノロジーを使うことによってその作業が不要になるだけでなく毎日最新の在庫管理データができていて、それを我々が利用できるようになるかもしれないという時代がすぐそこまで来ているんです。 

>なるほど、これからはID-POSデータだけでなく、在庫状況の時系列変動データや、購買に至らなかった方の行動データなど、様々な情報が活用できる時代になるんですね。 

>そうですね、Amazonのような勢力に対抗するためには、今までとは意識を変えていかなければなりません。ソリューションを超えてビジネスを拡大する。これからはマーケティングもイノベーションです。トヨタ流にいうと、オポチュニティ。潜在機会をどのように発掘していくか、お客様が気づいていない問題を発見してビジネス機会にする、それが付加価値になるというスタンス。それができれば顧客のロイヤリティが上がり購買につながる、店側はモチベーションも上がる、うまい仕組みで回っていく。それが理想、これからの小売業がどうなっていくべきか、に対する回答ですね。

<インタビュー日:2017年3月6日>

〜参考〜 明日(3月17日)発売の、月刊マーチャンダイジング2017年4月号に「化粧品の売り方・売り場改革ー顧客志向のマネジメント革新その1」として渡會氏が寄稿した記事が掲載されています。ご関心がある方は是非ご覧ください。

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