【プロフェッショナルに聞く】 日本初CRMストラテジストが語るカスタマードリブンの店舗運営とは<前編>

顧客獲得、顧客育成、顧客維持のマーケティングにフォーカスせよ

2017年、3PDG BLOGでは2つの新コーナーを立ち上げる。その一つが特定の業界や業務領域において、豊富な経験と実績に基づく洞察力を有する、また独自の手法を確立している方々に話を伺う“プロフェッショナルに聞く”シリーズだ。

その第一回のゲストとして(株)リテールマーケティングメソトロジー代表取締役、CRMストラテジスト 渡會公士(わたらいこうじ)氏に「日本初CRMストラテジストが語るカスタマードリブンの店舗運営とは」という題目でお話を伺った。渡會氏は2006年電通リテールマーケティングを設立、代表取締役に就任。2013年には資生堂グループのジャパンリテールイノベーションを設立、代表取締役会長に就任、顧客データの分析手法において日米のビジネスメソッド特許を数多く所有する、リテールマーケティング領域のプロフェッショナルだ。

編集長(以下、編)>今日はよろしくお願いいたします。いきなりですが渡會さんの“CRMストラテジスト”というタイトルに興味がありまして、これはデータサイエンティストなどと同様に一般的なジョブタイトルなのですか?

渡會氏(以下、渡)>どうでしょう(笑)。日本で一人だけかもしれないですね。電通リテールマーケティングを立ち上げる前から20年位使っているんです。CRMというのはご存じの通りCustomer Relationship Management、ストラテジストとは戦略家。でCRMは一言でお客様との関係を深くするマーケティングなのですが、関係を作る過程で当然その結果としてロイヤリティを創造していく。僕の考えの中では商品を売るマーケティングはない。昔からの言葉なのですがお客様のロイヤリティを創造してそれを維持していく中で商品が売れていくという感覚なんです。買われ方のマネジメント、マーケティングを考える戦略家がCRMストラテジストですね。

>買われ方のマーケティングですか…具体的にはどういうことなのでしょうか?

>顧客の起点のマーケティングでは、顧客獲得、顧客育成、優良顧客の維持という3つのフェーズが全てです。突き詰めればこの3つのフェーズのマーケティングだけを考えていけば良い。例えば廣森さん(編集長)をリテンションするためには、廣森さんが買っている商品を購買履歴の中から見てみよう、この商品と関連したこういう商品をお奨めしたらどうかな、これが顧客維持の一例になります。また、自店舗に新規のお客様を呼び込みたい、その時に既存顧客が最初自店舗で買い物をしてくれたときに何を買ってニューカスタマーになってくれたのかをデータから知ることによって新規のお客様にはこういう商品を提案しようということになる。CRMはマーケティングそのものですし、基本的にお客様の視点で買われ方を考える、商品の側に立って商品の売り方を考えるのではなく、お客様の側に立ってどうしたら買ってもらえるかを考えるマーケティングのことです。そしてそのためには当然お客様のデータ、顧客情報にひもづいた購買履歴情報が必要になるんですよ。簡単でしょう?(笑)

>そこまでひも解けば、確かに分かり易いです。

>凄くマーケティングを単純化した考え方なんです。

>なるほど、獲得する為にはどういう視点でデータを使えばいいのか、育成するためにはどういう視点でデータを使えばいいのか、維持するためにはどういう視点でデータを使えばいいのかということですね。

>そう、一度来店したお客様に、またお店に来てもらうには、もっとお店で買い物をしてもらうためにはどうしたらいいかということを考える。この一つの商品を買ってもらうことを考えるのではなく、そのお客様が何を望んでいるかを考えながらお店としてはその商品を厳選して提案する、そういう仕組みです。だからCRMは本来小売業がやらなければならない店づくりの仕組みそのものなんです。

>ちなみに、渡會さんは化粧品メーカ、医薬品メーカー、ドラッグストアのCRM、店頭マーケティングの実践支援をなさってきたと伺っておりますので、例えばドラッグストアにおける売上情報のどれくらいがID-POSデータ、顧客情報がひもづいた購買情報なんでしょうか?                                             

>カードホルダーでいうと7割、金額ベースで言うと8割ですね。

>それであれば…

>マーケティング情報としては十分ですね。

>ではそのようなデータを実際小売り業の方々は分析・活用していらっしゃるのでしょうか?ドラッグストアに限定せずで。

>しているところとしていないところで極端な差があります。ただ90%位が本質的には出来ていないと思っていいでしょうね。

>本質的な、という意味は?

>ID-POSの分析でRFM分析などは取り入れていて、優良顧客セグメントを作ったりということはしているんですけれど、それ以上のことをやっていたりDM以外の施策に反映しているの?というとメールアドレス情報をとっていないので郵送をモバイルのメールに切り替えられないんですよと15年位言っている人たちもいるし、その辺がおざなりな分析・活用で終わっているケースが多いですよね。

>有効活用ができていない?

>できていないというか、しないというか。今までの小売業の商品を軸としたマーチャンダイジングの手法にとらわれ過ぎて、お客様を起点としたマーケティングの施策に移行していない。スーパーマーケットというのは商品単価が低いのでなかなか顧客軸のマーケティングというのは難しいのですが、ドラッグストアは商品単価も高く客単価も高いので、あと医薬品、化粧品というのは顧客軸で売ってきた歴史もあるのでどちらかというとドラッグストアの方が顧客データを活用しやすいという土壌はありますね。

>なるほど、顧客単価、商品単価が高い商材を扱う小売店のほうが特にCRMデータの分析の必要性が高いということなんですね

>その可能性はありますね。また、そういうお店で商品を納入して売っているメーカーさんがマーケティング予算を持っているということも大きいかと思います。

>なるほど。ではそういう小売業に対し、顧客視点のデータ活用を進める上で、私たちウイングアークが立ち上げたLocationViewerは非常に有効ですよね、顧客軸のデータ分析を“ロケーション”の視点も踏まえて分析できる。

>そうですね、あとLocationViewerの価値ですが、第三者データを取り入れた分析ができることも大きいですね、例えば空間人口など。人の動きと自店舗の売り上げがマッチしているかということが検証できる。例えばS社のMという商品の店頭キャンペーンを行う。その商品のターゲット層が来ない店舗でキャンペーンを実施しても意味がないわけで。ターゲット層が周辺に来ている店舗を選んでキャンペーンや販売強化をすれば良い。

>そのようなことが今の流通業界で可能なのでしょうか?

>可能か、不可能かではなくそうあらなければならないのです。今までは全店一律オペレーションをやりきることが強みの、組織型流通業という姿でしたが、商品ごとに地理的背景、人の動きを踏まえ投資する店舗を変えていかなければならない、これらの仕組みを機動的に組み込むことがロスを無くし、購買機会を創出することにつながります。無駄なことをやりきるのは無意味。無駄なく機動的なオペレーションを実践していくことがこれからの流通業には求められるのです。それでないとeリテイル、ネットとの競争には勝ち残れないという時代がきています。

<後篇に続く>

 

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