日本の立ち位置は?世界の観光大国とのギャップ

 2015年の訪日外客数は1,974万人に達しました。2016年に入ってもその勢いはとどまることを知らず3月、4月と二か月連続で単月200万人を超えました。年初に3,000万人と訪日外客数の目標人数を上方修正したばかりの政府が、3月末に「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の場で4,000万人を目標とすると掲げた数字もあながち実現不可能ではないように思えてきます。

ついに我が国も“観光大国” “観光先進国”の仲間入りか?そもそも他の国と大して差がないのではないか?と思われている方も多いのではないでしょうか。そこで今回のコラムでは世界視点で我が国の現状を考えてみたいと思います。

世界で一番国外から観光客を集める国はどの国?WTO(World Tourism Organization)が2015年に発表したWorld’s Top Tourism Destinationランキングは以下のようになっています。

1位:フランス(8,370万人)
2位:アメリカ(7,480万人)
3位:スペイン(6,500万人)
4位:中国(5,500万人)
5位:イタリア(4,860万人)

1位のフランスの総人口は6,500万人なので人口を観光客が上回っています。フランス外務省(France Diplomatie)によると、2020年までに外国人観光客を1億人に増やす目標が示されています(HP記載はこちら)。昨今のテロ事件の影響で日本からフランスを訪れる観光客数は減少傾向にあるようですが、フランスを訪れる外国人観光客の8割が陸路を利用している、すなわちヨーロッパ周辺国からの流入ということ、さらに今年はサッカーの祭典「Euro 2016」がフランスで開催され世界中から150万人を超えるファンが来るとされているため、1億人に向けて着実に数を伸ばしていくことでしょう。ちなみに日本より2割程度国土が狭いイタリアには、日本の倍以上数の観光客が訪れているようです。これらの数字を見ていくと観光大国への道はまだまだだなと感じます。

 次に、観光産業への評価という視点で日本と諸外国を比較してみます。

 どのような点が諸外国に比べ優れていると評価されているのか、またどのような点を今後強化していくべきなのか、世界経済フォーラムによるレポート「旅行・観光競争力レポート(Travel and Tourism Competitiveness Report)」を参考に見ていきます。

 この調査は、旅行・観光の競争力を測る4つのサブインデックスと各サブインデックスに付随する14の指標(ピラー)とさらにその下に分類される約90の指標(サブピラー)から構成される「旅行・観光競争力指数(The Travel & Tourism Competitiveness Index)」を用いて行われるもの。単に外国人旅行者が多い、観光収入が高いというだけで順位が決まるわけではありません。直近の2015年5月に発表された「旅行・観光競争力レポート2015」によるランキングでは、日本は世界141ヶ国・地域のうち過去最高の9位となりました(2014年は14位)。

 では具体的に各評価指標とスコアを見ていきましょう。4つのサブインデックスと14のピラー毎のスコアと順位は以下となっています。


旅行観光競争力レポート14のピラーのうち最も評価が低かったのは「価格競争力」。「価格競争力」は4つのサブピラーから構成されますが、ホテル価格については問題とはされておらず、空港利用料、物価、燃油価格レベルへの評価が低いようです。一方最も評価が高かったのは「文化観光資源・業務旅行」。これは従来の世界文化遺産の評価に、口承・無形文化遺産、大型スポーツ施設数、国際組織会議の開催数、インターネット上での文化観光検索数を追加し評価したものです。また「ICT活用」についても(訪日外国人向けサービスというよりも、企業間取引によるICT利用度、インターネット普及率、携帯電話普及率など国内のICT活用度に対する評価が主)高評価を得ています。筆者もよく海外旅行に行くのですが、個人的には対外国人観光客という視点では、まだ諸外国と比べFree Wi-Fiスポットの整備など課題が残ると感じます。

 次に、上表に仔細記載はできていませんが、さらに細かくサブピラーレベルで評価が高かった点、低かった点を見ていきます。

 まず評価が高かった点としては「安心・安全」のサブピラーである「Index of terrorism incidence:テロ発生率の低さ」と「Homicide rate:犯罪発生率の低さ」がそれぞれ一位と二位。「健康・衛生」のサブピラーである「Access to improved sanitation:衛生的な環境を得られる総人口中の割合」「Access to improved drinking water:衛生的な飲料水を得られる総人口中の割合」「Hospital beds:病床数」が一位。「人的資源と労働市場」のサブピラーである「Qualification of labor force:労働者の質」「Degree of customer orientation:顧客思考度合」が一位。「地上交通・港湾インフラ」のサブピラーである「Quality of railroad infrastructure:鉄道インフラの品質」が一位と好評価を得ています。一方で評価が低かった点としては「Prioritization of Travel&Tourism:旅行・観光の優先度」のサブピラーである「Effectiveness of marketing and branding to attract tourist:観光客誘致のためのマーケティング・ブランド戦略の効果度」や「International Openness:国際的開放度」のサブピラーである「Visa Requirements:ビザ免除度」などが気になる点です。

 「旅行・観光競争力レポート」の結果から、旅の目的となる観光資源の豊かさと、ICTインフラの充実、そして安全かつ清潔な環境で安心して旅行ができ、各所で世界トップレベルの観光関連スタッフのおもてなしを受けることができることが日本の強みである。その一方でその魅力を十分にPRしきれていない、ビザ要件が厳しい、そして他国に比べ費用が割高であると評価されているという現状が見えてきますね。

 本コラム冒頭で記載した3月30日に開催された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の場でも、政府が重視する20カ国・地域のうち現在もビザが必要な中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアの5カ国の発給条件緩和を加速させるなど新たな目標人数達成に向けた施策が提示されるなど、対外的に指摘されている課題に対しても認識しており、これらを解決し観光大国の仲間入りを目指して進んでいるようです。

 国際的なレポートや観光ランキングを見ることで、自分たちが置かれている状況やどのように評価されているのかを客観的にとらえることができ面白いですよね。第三者データ活用も然りです!

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