訪日外客数4,000万人突破のカギはドイツかもしれない

日本政府観光局(JNTO)より月次で報告のある訪日外客数。11月16日の10月推計値発表では、単月で前年同月比16.8%増の213万6千人、累計で前年同期比23.3%増となる 2,011 万 3 千人 と、遂に2,000万人を突破したことが明らかになりました。この結果を受け同日観光庁長官、本年度訪日外客数が2,400万人前後に達するという見込みを発表しました。

JNTOの報道発表内容を見ていくと、市場別ではカナダとドイツが単月として過去最高を記録したとの記載がありました。今回は少しヨーロッパ市場、ドイツについて掘り下げてみようと思います。

訪日外客数4,000万人達成の壁、ヨーロッパからの訪日需要喚起

以下表は、3rd Party Data Gallery On Demandの無償コンテンツ「訪日外客数」で日本を訪れる観光客数を年単位、地域別に集計したものです。直近の2015年を見ると、昨年対比でアジア圏が53.9%増と突き抜けていますが、オセアニア等に比べても北アメリカ、ヨーロッパの数字の伸びは芳しいとは言えません。2020年までに4,000万人の目標を達成するために、ヨーロッパからの観光客誘致は日本のインバウンド観光における大きな課題となっています。

それを数字の裏付けで見ていくと…国連世界観光機構(UNWTO)の発表する「World Tourism Barometer 2016」によると2015年の国際観光客数は11.8億人となり、うちヨーロッパからの観光客数は6億900万人。実に全体の半数、51%を占めます。ヨーロッパの人達は海外旅行好きですね。私は過去北欧に本社を置く企業の日本法人で仕事をしていたのですが、同僚たちの気持ちのいい休暇の取得っぷりに驚きました。イースター休暇、2週間×2回の夏季休暇、クリスマス休暇…よく休みます。そして旅行を楽しんでいました。

それぞれの国の労働法の違い、文化の違いもありますが、ヨーロッパ諸国には魅力的な観光大国が数多くあることも旅行に行きたくなる大きな要因ではないかと感じています。UNWTOの発表する国際観光客到達数の国別順位を見ると、1位から10位までにフランス、スペイン、イタリア、ドイツ、イギリスと5カ国がランクインしています(日本は16位)。陸続きで移動しやすい範囲にこれだけ魅力的な観光地が集約しているので、あえてヨーロッパ圏外に出て行かなくても満足できてしまうのかもしれません。その証拠のようなものですがヨーロッパ圏内のみで周遊する人の割合は80%を超えるという記事を読んだことがあります。

では、残りの20%はでは何処に行っているのか?6億900万人のうち20%がヨーロッパ圏外に旅行に行くと仮定するとその数は1億2千万人。昨年日本を訪れたヨーロッパ圏の観観光客は1,244,970人。我が国はわずか1%しかヨーロッパからの観光客を取り込めていないということになってしまいますね。

今月7日からJNTOがヨーロッパからの訪日需要が喚起を目的としてヨーロッパ15か国において、2003年のビジットジャパンキャンペーンが始まって以来初となる大規模な訪日促進キャンペーン「JAPAN―Where tradition meets the future」(日本-伝統と未来が出会う場所)を開始しています。このキャンペーン動画を制作したドイツ人映像作家Vincent Urban氏は

“まだ小さかった頃から日本文化が大好きでした。日本では、古くからの伝統と革新的なライフスタイ ルが融合していることがとてもユニークです。自分のような外国人にとっては、美しい風景とフレンドリーな人々もあいまって、このコントラストに溢れた国には尽きることのない発見があると感じられます”

と語っています。この動画を見たヨーロッパの人々が同様の印象を抱き、日本に関心を持ち、休暇を過ごす場所として日本を選択してくれるようになるとよいですね。

ドイツ人観光客は独特の行動パターンを持ち、4,000万人突破のキーになるかもしれない

日本を訪れるヨーロッパ各国の訪日客数ランキングは、1位:英国、2位:フランス、3位:ドイツ、4位:イタリア、5位:スペインとなっています。1位のイギリスも気になるところではありますが、今回は先にも述べた通り10月に単月として過去最高の訪日客数となった3位ドイツを取り上げてみましょう。以下の図は3PDG On Demandの無償コンテンツ「訪日外客数」で年間を通じどの月に多く観光客が日本を訪れたかをヨーロッパ全域と、ドイツのみで比較した図です。

ヨーロッパ全域は3月、4月の桜の時期、夏のバケーションシーズン、紅葉の秋にピークが来るという一般的なグラフの形状です。一方でドイツは夏場に訪日数が落ち込み、3月と10月にピークが来ているという特徴的な波形を描いていることがわかります。Vincent Urban氏のコメントにもありましたが、桜、紅葉といった日本らしく美しい風景により関心を持っているのかもしれません。それであれば花火など夏の情緒あふれる観光資源を打ち出してみることも、夏にドイツ人観光客を呼び込む手段になるかもしれませんね。

それでは訪日ドイツ人観光客は3月と10月にどこに行っているのでしょうか?

3PDG On Demandの無償コンテンツ「宿泊旅行統計調査(外国人)国籍/月別宿泊者」で都道府県別ランキングを見ていきましょう。ちなみに通年で見た訪日外客数全体でのランキングは 1位:東京都 2位:大阪府 3位:北海道 4位:京都府 5位:千葉県 6位:沖縄県 7位:福岡県 8位:神奈川県 9位:愛知県 10位:静岡県 となっています。何か違いが見えてくるでしょうか?

3月に3位、10月は4位と神奈川県が上位に浮上しています。また広島も上位にランクインしています。その一方で、沖縄や北海道が全体数に比較し低いランクになっているということがわかります。ここから、リゾート地に滞在するのではなく、歴史・文化に触れることを目的に訪日している方が多いのではないかということが推測されます。

もう少しエリアを詳細に見ていくことで何かわかることがあるかもしれません。ここからはオープンデータでは実現できないため、商用データを参考にしていきます。

”訪日ドイツ人観光客は3月神奈川県のどこに行っているのか?” 参照するのは、ナビタイムジャパンの「インバウンドGPSデータ」を基に、訪日外客数の分布を1キロメートルメッシュという粒度で把握できるようにコンテンツ化した「訪日外国人エリア滞在分布」です。

これによると、横浜市、鎌倉市、箱根市に多く分布が見られます。横浜市は国籍問わず通年観光客が訪れるエリア、箱根市はアジア圏の観光客からも人気のエリアですが、鎌倉市の分布が多いことからも先述の歴史・文化という共通項が見えてくると思います。

さらに、参考として観光庁が発表する「訪日外国人消費動向調査」2015年の報告によると、「来訪回数20 回以上のリピーターの占める割合が9.1%と他の国籍・地域に比べて高い」「観光・レジャー客の交通費は、調査対象の国籍・地域の中で最も高い」ということを訪日ドイツ人観光客の特徴として挙げています。私もオーストリア、イタリア、フランスにはそれぞれ10回程度行っているのでその経験から想起できるのですが、その程度繰り返し行くと国内の主要観光エリアはほぼ把握でき、その上で自分の好きな場所が定まり、自分らしいディープな過ごし方ができるようになり、より楽しさが深まります。20回も訪れるとは…真の日本愛好家なのだろうなと確信できます。そんな日本を熟知したドイツ人が、公共の交通手段を巧く活用し周遊しているのかもしれません。それゆえ最も観光客を集める大都市東京のお隣、神奈川県にも気軽に足を延ばす気になるのかもしれませんね。

ドイツ人の日本での動向を調査することでヨーロッパからの観光客に対する魅力的な周遊ルートや観光資源のPRになるのではないかと感じました。

前へ

最新の人口・世帯分布を市区町村レベルで見える化!H27 国勢調査人口等基本集計今だけキャンペーン価格

次へ

動き出すオープンデータ活用~医療分野~